エブリデイ


例えば、ザ・クラッシュのロンドンコーリングのジャケットのポール・シムノンがベースを床に叩きつけてるように、あんなに情熱的に何かを壊せたらどれだけ素敵だろう。例えば、陶芸家が気に入らない作品が出来たとき叩きつけて割ってしまうみたいに、あんなに激情的に何かを壊せたらどんなに素敵だろう。会いたいときに会って、やりたいときにやって、キスしたいときに誰とでもキスをして。そんな風にシンプルに生きられたらどれだけ素敵だろうか。そんな生き方してたら、なんだかんだと罵られるだけでちっとも素敵じゃない。素敵じゃないのはこの社会のせいだ。ふざけてる。

俺がそんなこと思ってるって言ったら君はきっと、気持ち悪い、とかそういう類のことを言うんだろうな。ってゆうか絶対言う。「は?きもちわる。なんかんがえてんの。ただのやりたがりてことじゃん」とか言うんだ。きっと。なので言わないことにしようと思う。

「陽くん、なん考えてんの」
「あ、いや、なんも」

いまの言い方微妙だった?なんか変なこと考えてました、みたいな言い方だったよなあ。絶対言うだろ。「どうせ変なこと考えてたんでしょ」

「なにそれ。どうせ変なこと考えてたんでしょ」
「いやいや…なんでだよ」
ほら、きた。いやいや、そんなことないぞよ。ぼかあバカだけど、いろんなこと考えて生きてるぜ。意外とね。あんまり考えすぎなので胃炎になっちゃったりするぐらいだ。慢性胃炎。きみのほうが意外と考えてないよね。行き当たりばったりだったりしてね。見てないようで意外と見てるぜ、ぼかあ。

「陽くん、最近口臭ひどいよね。」
「えっ…マジで?」
「胃が悪いんだよ、たぶん。そのにおいは」
「マジかよ〜」


「考えすぎなんじゃない?」


はて?なんとおっしゃったのか姫君。

「いや、だから考えすぎなんじゃない。いっつもいっつも。言っとくけど、わたし分かってるよ。陽くんが意外と考えすぎで慢性胃炎ぽいことも。たぶん、すごく自由でいたいと思ってるんでしょ。分かってる。だから束縛しないんじゃん。てゆうか束縛好きじゃないからいいんだけど。がんばって、陽くん」



急展開、というやつ。あ、君、意外と分かってるね。はは…。なんだ俺ダサいなあ…。なにこれ。すごく惨めな気持ち。明日にでも死んじゃいたいぐらい惨めな気持ち。今死んだらちょっといろいろ処分してなくて、困るので。明日にでも死にたいくらい、て感じ。うわーすっごいみじめじゃない?これ、なにこの感じ。

 彼女はベッドを抜け出す。コーヒーメーカーのスイッチを入れる。



「惨めなのは分かったから、さ。ハムエッグ食べる?」


ハムエッグも食べたいけど、とりあえず、ぼかあ君にプロポーズします。